物語を整える

本番まで残る時間はあと一日です。参加者のレベルは確実にあがって来ています。ところが公演時間はあくまでも二時間です。

演出家の森田雄三は今まで通り小編成のチームを幾つも組み、作品の出来によって採用不採用を決めて行きます。

最終的に舞台に出られるのは何人になるかは分かりません。しかし、たとえ不採用になっても、この方法のなら選抜過程において一人一人を指導し、一人一人のひそめられた力を最大限に引き出す事ができます。

昨日すでに幾つかの見込みのある作品ができていました。しかし一回はうまくいっても、繰り返すと転けてしまう事はあります。実際に有力候補の中にも、すでに衣装まで決めたにも拘らず不採用となった作品もありました。仮決定になった作品の合間をぬって、今日も新作が披露されました。

これらの新作も驚くほどの質でした。もし一日前に生まれていれば確実に採用されたであろうものが多かったです。しかし今となっては、作品を磨く段階に入っていますので、採用されるための基準は昨日よりも厳しくなっていました。最終的に残ったのは18作品でした。

稽古の内容も少しずつ変わってきました。今まではとにかく自然に台詞などが浮かぶまで間を取る事にしていましたが、それはあくまでも台本を作り上げる段階の話です。今度は各作品の贅肉の部分をきり落とし、出だしから切れのあるものに仕上げる必要があります。

イッセーさんは今日初めて参加者の作品に加わりました。選ばれた作品は、その突然の登場によって思わぬ展開や発展をむかえる事になります。

農家ののんびりした母と息子の居間に息子の親友のつもりのイッセーさんがチャパツロンゲ姿で入ってきます。たじょろく息子は初対面の挨拶をしてしまいます。

「オッス」
「ハ、始めまして」
「オマエ何だその態度は、裕二!親友ジャン!突っ込めよ!」
「あ、悪い。何しに来たんだ。」
「新曲出来たから聞けよ。これでストリート出来るかな。」

明日は本番です。緊張も期待もたかまります。

三月豆
茨城弁が演者を自由にする。

チェホフの三姉妹
おしくもボツになった小5チーム。

お爺さん
焼鳥屋のおじいさんも参加。

母の帰りを待つ親子
テレビを邪魔する父親にやさしい中学生。

突然の来客
畳の部屋に土足で上がり込むミュージシャンのイッセー。

森田雄三
森田は声をたてて笑う。駄目だしよりも参加者を勇気づける。

舞台下の両袖に稽古をする列ができていた。昼の部の参加者も夜の稽古へとなだれこみ、財団の人に頼んで夜十時まで延長稽古となった。

参加者が力を付けていて新しい組み合わせが(家族が)出来てくる。空気が高まって失敗組から新しい相手を見付け、再チャレンジする人が続出。意外なのは前の日良い出来だったチームが逆にしぼんでしまうことだった。

とっさに出た台詞を覚えていなかったり(あたりまえのことなんだけど)細かく考え過ぎて自分の実感とつながり過ぎて暗くなってしまう。あるいは調子に乗って勢いが出て、スピードがつき過ぎ間がとれなくなったりする。

でも誰一人自信を失う人はいない。