神奈川一日目
開始時間の三十分前にワークショップ会場である神奈川青少年センターに着くと、早速エレベータのぼたんを間違えて三階まで上がってしまった。だれもいない事を確認してゆっくり階段を降りると、演出助手のヨリちゃんが大きな荷物を抱えながら、「いったい何処から来たの」と不思議そうな表情を浮かべて疑問を投げかける。初対面からもう一年以上たっているのに、怪しい容姿の外国人に対する不信感を完全にぬぐいきれていない様子だ。
荷物を楽屋に置き稽古場に入ると、すでに数十人の参加者が集まっている。壁際に並べられた椅子に座って、少し緊張した表情を浮かべながら一所懸命アンケートらしい書類に何か記入している人もいれば、これから始まろうとするワークショップの予想を仲間とわくわくしながら話し合う者もいる。
演出家の森田雄三と、プロデューサーの森田清子が次から次へと来場する参加者を観察している。今回の参加者はつくばワークショップよりもはるかに多いが、年齢層は前回よりも均一だ。
緊張した空気をほぐし、早めに流れを作る手段を探す必要がある。
まず、壁際の椅子を部屋の中央に写し輪を作る。その中に座布団を敷き、全員を演出家を中心に円陣状に集める。稽古は相変わらず自己紹介もなく、いきなり「何かを言え」という森田雄三の一言で始まる。
参加者は風を求めているかのように一所懸命に翼を広げようとするうち、そのなかに嵐を呼ぶ力を持つ人物が紛れ込んでいる事が判明する。体の不自由な彼が舞台に上ると、会場にさらなる緊張が走り、取材に来ていたテレビカメラが突然止まる。演出家自身も障害を持つので、二人はこの状況を最初から平然と楽しむが、健在者の加者は戸惑い、迷い、自分の中の差別心と戦う。自然な関係を作り上げる事に集中するとやがて「芝居」という概念からとき放たれ、先入観なく相手に反応する感覚が生まれる。
昼の部の参加者の何人かは、夜の部まで残り、後ろから聴講する。昼の進展が夜にも伝わったかのように、参加者はすぐに「困る」事から湧き出る反応を拾う練習に取り組めた。
「褒めてもらいたい」と旦那を攻める奥さん。
「あたしがチッとも恥ずかしいと思わない」と姉にたいして開き直る妹。
妻にどんなにつつかれても反省しない旦那。
参加者は次から次へと相手を選び、さまざまな人間もように挑戦するうち時間がすぎ、一日目が終わる。
参加者も場も生き物だ。発展の方向も速度も違う。しかし、でしゃばらずに相手の空気に繊細な反応を示す参加者がすでに何人もいる。明日の展開が楽しみだ。

早めに着き、壁際に並ぶ参加者は緊張している

始まる前にアンケートを書くのは難しい

入って来る参加者たちを見守る森田

時間が来ると、全員がまんなかへ集まる

「私の何処が良いのか教えて」と言って夫を困らす褄
芝居しているチームの表情を見ると、見る方も自然と反応する
自然に家族を演じられると場が和む
考える姿はさまざまだ
「あたしは少しも恥ずかしいくないからね。」
平然を装う旦那にケリを入れる妻
一日目の中頃からもう組んで芝居がはじまった。
参加者のなかに障害者の男性がいた。彼は半身と言語が不自由。
彼とどんな役だったら自分が係わってやれるだろうかとの森田さんの問いかけで、引き篭もりの人と友達。王様で身分の違い。老人をやってもらって介護する。等でで、じゃやってみようということになった。
- 兄と妹の設定
- ビデオ撮りを頼んだのにどうしてやっといてくれなかったの。
- 勝手にスイカ食べないで。私のだから。と普通にある兄妹げんかで何となくほのぼのとした空気が立ち上がってOK。
- 母親と息子
- 一緒に手打ちそばを踏んでこねようとする母親。リハビリってそんな風に言われると余計腹立つもんだよね。違います。ボツ。
- 母親と息子
- (母親)私って恐い。
- (息子)すこし。でもね、腹が立ったのよ。本当はお父さんを殴りたかったのよ。
- (母親)あんたに殴ってほしかった。
- (息子)明日は明日の風が吹くさ。
- なんともいえない何か想像をかき立てられる親とこの会話。
- (息子)すこし。でもね、腹が立ったのよ。本当はお父さんを殴りたかったのよ。
私だったらどういう風にやっただろうと想像する。やっぱり母親か。
きっと町内会の愚痴を関係なく愚痴る。
婦人会の副部長に選ばれたんやけど、どうせ雑役や。ゴミの分別の当番や。私がやるときちっとするとか何とか言って押しつけとるかや。
あのね。町費集会すると私が一番集まりが良いがやから。
とか。
今度爺ちゃんの7回忌があるけど一緒に行くか!?
とか。
だけど実際には、前に出てやってみないとどんな会話になるかわからない。
7月18日(月)祝日
ワ−クショップ初日、9:00より会場入し、仕込み始める。太君村田さんは、照明等々、直ぐに仕事に付き、オゴウさんも現場の人との打合せをしながら、作業を始める。宮岸、取りあえず会場の方、財団の方より、仕事を聞き、机、椅子、荷物を運ぶ。
ベランダ、楽屋、会場の仕込みを徐々に行うスタッフ。
ベランダには、煙草用のバケツ、座るための畳。
楽屋にはパソコン、プリンタ、ごみ袋、飲食物、机、椅子の設置。
会場は椅子、座布団、荷物置場、飲み物場、マイク、カメラの設置等々。
飲み物場が充実仕手来ると、仕事の合間に休憩を入れる人も出てくる。飲み物を飲んで休んでいると清子さんとさかなさんと、請求書の事や、仕事についての話になり、そのなかでやった仕事を振り返るため、イメージするためにも、日記を付ける事になる。仕事をする時には、まずイメージする。この請求書を送ったら、送られた日とがどう思うのか。会場に入ってくる人が安心するには、づいう椅子の配置、スタッフの配置が良いのか。仕事する前のシュミレーションを怠るな、と。
途中でイッセーさんも着席。ワークショップ前、ベランダに出て談笑する森田らがまるで動物園の檻のように見える。
12時前にハスミさんにビデオの取り方をヤッコさんと教わる。
会館の外景を撮る。1つのワークショップを30分いないに撮影をおさえるなど、決め事をする。地域振興の野林さんらが会場入り。軽く昼食をし、いよいよ、開場。早い時間からお客さんがすでに集まる。
1:00、横浜第一回目のワークショップ開始。
つくば同様の言葉を発する所から始まる。例によって自己紹介、状況を語る。実感を言う人々。「家より涼しくてイー四ね」等々。
森田さんが「おもしろくね」という度に少しずつ、変わったコトをいいはじめる。「チョコレートパフェが好き」という発言のあとに森田さんが「この中で一番チョコレートパフェが好きというのが似合わない人を一斉に指さす」といい、ひげ面のフリーライターの方が多くの人に指さされ、笑いをさそう。
言葉を発する作業は続き、参加者の「きりんの舌は紫」に
「これは、変な人だと思われたい」ともりたさん。
「きりんは笑うと出っ歯」
これはイメージがあると森田さん。
「国広トミユキの八重歯がかわくと唇にくっつく」
これは、地下に潜っていると。自分のなかの地下に。
さかなさんが「東山動物園でゴリラを見た」
これは「子供の頃の記憶、実際にあったコト」
「八重歯は歯垢がたまりやすい」
これは飛躍しすぎ
隣の人からつなげる連想ゲームでは飛躍しすぎ。
なぜ自分からこんな言葉が出て来たのか。不思議な言葉ここに行く。
きりん → 八重歯 → シコウ → 宇宙
子供の頃の事はオールマイティに使えると言葉として威力がない。
参加者の「野口英世は癖毛」
森田さんが「話続けて」と
「野口はなぜ千円札に選ばれたのか」と参加者
「きりんを丸刈りにしたら羊だった」
「手紙に切手がない」
話を続けて行く、となりの人となりの人へと。
次に困るイメージ、となりの人を困らせる。
「浮浪者にからまれる」
「悩み事を相談される」「悩みがない事が悩み」
森田「おもしろくねー」
次に告白に移る。
男女ペアで告白する。男から女、女から男。
森田「今日、下着を新しくして来たんです」と言うよう女の人に指示。
ペアの男「俺にどうしろと」
森田「これは現実ではない」と。
次に「私のイートコあげて」
「笑わせて下さい」
森田「おもしろくねー」
「みかたになって下さい」
森田「これは台詞劇になるからダメ」
ここら辺から徐々に二人での芝居っぽいのが始まる。
「出来ちゃったと母に告白」
見た目の若い女性を中学生の設定にし、妊娠したことを母に告白するシーンをやる。
休憩中に身体障害のある参加者と森田さんの雑談より、彼を中心に芝居を作る案が立ち上がる。
まず、同情を引かないようにするにはどういう設定がいいか森田オフィススタッフに聞く。
「普通に接する」
「なんか同じ動きをする」
「年寄にしちゃう」
「すごい無視する」
イッセーさん「身分が違う、国王とか王子にする」
森田さんを中心に車座の体型から舞台風に変え色々な設定を試す。兄と妹、母と子、父と子、兄と弟。
兄と妹
妹「やっぱり悔しい。聞きたい事があったら聞けばいいじゃない。いいたい事があったら言えばいいし。もどかしい事多いよねー。うちはさ、金持ちでもないし、父母は高齢だし、あの男はさ、何年も付き合ったのにあたしを捨てたのー。自分は成功する、なんていってさ。
兄「大丈夫、、、」
妹「あのさ、父さん生きてた時にさ、父さん一回で良いからあの男殴りたいって母さん止めてさ。」
兄「大丈夫、、、」
「お兄ちゃんそう言ってくれるけどさー、お兄ちゃんには正直、あいつ殴ってほしかった。」
兄「大丈夫、、、大丈夫」
妹「あたし殴ってもいいんだけどさー」
兄「大丈夫、、、明日は明日の風が吹く。」
体に障害のある人と舞台に上がるとその人の差別度が出る。
森田「その人の差別意識が何処まででるか」
叔母「夕食、何たべよっか。」
甥「好きなのなに。」
森田「嘘だよなー」
これはお婆さんを信号わたらしたり、荷物を持つのと一緒。
10組くらいやった所で時間終了。初日第1回目のワークショップを終える。