異文化との遭遇
とある別の仕事のため、皆が宮崎入りする時、私だけがもう一日東京に残る事になった。仕事だし有意義なので仕方がないが、あとで聞いた話などから、今回の初日も是非直接見たかった。宮崎ワークショップの一日目に関するレポートや写真は他のスタッフが提供するが、私もここに昔話等を一言だけ書こう。
日本を何度となく旅しているが、特に九州や北海道は回数も滞在時間も長い。幼い時はヒッチハイク等の無銭旅行も多かったので、各地域の住民の好意に甘える事も多々あり、ホテルの旅よりもはるかに密接な交流があったのだ。
そんな旅の体験から、宮崎の一つの大きな特長は時間的ゆとりのように思える。
熊本の友人を尋ねようと、宮崎の高速バス乗り場へ向かった時の話だ。出発時間の10分前に切符売場へ行くと、カウンターには二人の前客が並んでいた。列をつくらず、横に並んでいた、と言った方が正しい。一人は丁寧に申込用紙を記入しており、もう一人は障害者手帳をもってカウンター向うの職員と何か相談していた。
待つこと七分、相談も終わり、隣の客は記入済の申込用紙を差し出すと職員はその内容を丁寧に確認し始めた。出発時間まであと三分しかないので、このペースでは到底間に合う訳がなさそうだ。なのに、何故かさほど慌てる気にはなれない。自分の番が来ると、もうまさに出発の時間の三十秒前だ。、職員が時刻を確認し、急がず慌てずゆっくりとあるバスを指さし、「あのバスだね。ちょっと行って来て、運転士さんにいま切符を発行しているから少し待つよう言ってくれないかね」と言う。言うとおりにすると、出発の準備をしていた運転手さんが快く、まるで当り前のように私を待ってくれたのだ。
時刻表やマニュアルに縛られた都会では考えにくい親切を可能にするこの時間的、感覚的ゆとりは、一旅行者にとってとても心地良かったが、演出家の森田にとっては苦労のもとでもあっただろう。出題に対する手ごたえは確かにあるものの、反応速度や展開方向は今までとは少し違う。また、生まれて来る話も東京等とは違う。相手に対する遠慮のしかたは都会とは違うし、都会では儀礼的でしかなくなった言動にも未だ気持や配慮がこもっている。頼まれずとも自らすすんで姑の肩を揉む嫁はここには存在するのだ。
森田は、東京なら「ありえない」の一言で片づけられる設定はここでは日常である事はすぐに認識するが、問題はそれをどう芝居に組み込み、纏めるかだ。各ワークショップのテーマは参加者たちの人柄や土地柄から生まれてくる。今回はその誕生の瞬間を見逃したのはとても残念だ。

稽古前に会場を見るイッセーとスタッフ。広々として気持が良い

皆が描いているのは祖父母の家の間取り図。演技をするには思い出す事が大事なので、先ずは記憶を呼覚ますことだ

今回も幼い参加者が多い。しかし、年配の方や男性が少ない

歩く準備。体の傾斜方向がその人を語る

面白い歩き方の参加者を探す森田。恰好のサンプルはもうじき見付かる

前向きな態勢が良い。折角来たなら楽しむのが正解

伝言ゲームかな。話を発展させるには良い方法の一つだ

男性参加者が少ないので、最後まで残れば出演の可能性がかなりたかい。このタイプの男性なら人気者になりそう

参加者に話しかけるイッセー。一日目だから緊張はまだほぐれていない
宮崎ワークショップ初日と二日目と
言葉を回して行ったり、記憶の思い出し作業をして行くうちに、空然何かにつき当たったかのようにリズムが湧き出てくる瞬間がある。
それが宮崎の場合なかなか来なかった。
噂話を回していっても(隣の人が言ったことに尾ひれをつける。現実によくある話だ)トゲのある噂話に発展していかない。コンビを組んでやっても自己主張がない。
いたって大らかというかのんびりしている。
茶の間でみかん食べてるような感じでやればいいのよと森田さんはいつも言うのだけれど宮崎はまさに茶の間でみかんを食べてる状態。
じゃ、本当にリラックスしてるかと言うとやっぱりよそ行きのような気がする。
宮崎弁で身近な人で特長のある人をやってみてと森田さん。ようやっと宮崎弁になって話しの続く人が出た。
「ふたが取れればもっとイメージがくっついてくる」と森田さん。
「てってってってっしゃっちゅうと宮崎弁のリズムで話すと死んでしまった人と現実の人を同時に語られても不思議はないって感じがする」とイッセーさん。
「軍港はありましたから戦争の時は爆撃はされましたけどね、町はひどい空襲は受けませんでしたね。」
「島津藩に攻められましたから、かえってねえ、明治維新の時も新政府側でしたしね。西郷さんのようなすごい人も出ませんでしたねえ。まあ静かなところですわ」とタクシーの運転手さん。
とにかくリズムがゆったりしているのか長いのか一気には吹き上がらない。
宮崎は、家族一緒に御飯を食べる。お盆、正月に親せきが集まる。お墓参りをする。いとこ会までありますと参加者声を大きくして言う。
神奈川(東京の)と宮崎の違いをまざまざと感じる。
初対面でも挨拶抜きで話せるような県民性を生かそうと身近に起こった事件を言っていく。
「強盗がこたつに入ってお茶飲んじゃったと。そこんちの子供が足が早くてぇ、追いかけてつかまったと」
「夜鍵あけて寝ちおったらポシェッとがとられて。お墓のゴミ捨て場に捨ててあったと」
「それで対策なんか立てた?」と森田さん。
「夜鍵かけて寝ることにしちょっります。」
祭りを上げてもらう
つのまつり
えれこっちゃまつり
もっかんじん
ひょっとこまつり
等が出て。ひょっとこまつりをやることになる。
ひょっとこの面を男性が。
おかめが女性らしい。
たーたら、たーたら、たーたらた
合いの手が入った。