悩み男と卵焼き機

昨日、暑かったはずの楽屋は寒く感じる。なのに、他のスタッフは相変わらず暑くも寒くもなさそう。間違いなく風邪だ。でも、医者へ行っても「風邪だね」と言われ、風邪薬を渡されるだけに違いない。それに、病院の待合室より、舞台上の方が数倍面白い。

しかし、顔色も良くないらしく、心配そうな視線に耐えきれず、診察を受ける事にする。会場の職員が病院探しに付き合ってくれる。運よく、込んでないようだ。受付の看護婦さんに、英語で名前などを聞かれ、体温計を渡される。十五分程すると、診察室に呼ばれる。カルテや体温計を見た先生に、「風邪だね」と言われ、風邪薬の処方せんを渡される。

隣の薬局で、処方せんにかいてある薬を買い、会場へ戻ると、もう稽古がかなり進んでいる。舞台に椅子を四脚並べた「舞台」稽古が始まると、上手く行きそうながらも何故か火が付かない雰囲気だ。

演出家の森田は、試しにイッセーさんに数人と組んでもらうと、その違いが一目で分かる。印象的だったのは、イッセーさんにはひと言も返事しない少女役だった。明らかに実在し得る場面だ。「ふて腐れた男性役」もなかなか現実味のある場面だったが、まだ「舞台上の相手」ではなく、「イッセーさん」を意識しているようにも見える人もいる。いきなりなので、当然ではあるかもしれないが、何となく勿体無い。

けいこは円陣にもどった状態でつづく。となりの人とのやり取りを試してみたり、一人芝居でイメージした人物を描いてみたり。

ある体格のがっちりした男性が、後輩の男性のなやみをきくのがとても上手い。全然興味がないものの、話し手にとっては心地の良いあしらい方だ。後輩は、二人が卒業し、先輩が結婚した今も、当時の「彼女を紹介する」という約束がはたされていない事を不服としている。

悩みをぶちまける男性の声は今も印象に残る。もしオペラの世界に入ったのなら、きっと素晴らしい歌手になれたであろうと思わせる響きだ。二人の芝居を見ると、色々なストーリーが脳裏に浮ぶ。悩める後輩は、大学で音楽ではなくラグビー部を選び、せっかくの声が皆の笑いのたねになった。人と接する自信を失った後輩が頼ったのはこの先輩だった。当初はなんとかして上げようと思っていた先輩も、今は一生愚痴を聞いてやる事しかできないという事に気付き、あきらめているようだ。

昔は各地に実在し、今は殆ど姿を消した「悩みを聞いてくれる飲み屋」の場面にももってこいの二人だ。

夜、ベーシスとの岡田さんが新潟音楽隊の打合せを始める。今の所、持ち込まれた楽器はエレキギター、縦笛、クラリネット、そして卵焼き機を含む打楽器類等だ。その周りには、既に住人以上の希望者が群がっている。何故か一瞬、羨ましく感じる。音楽隊は今回も楽しくなりそうだ。

イッセーと若い男性
今日、イッセーさんも数名の参加者と絡んでみるが、まだ少し時機尚早のようだ。流れが生まれるものの、最終的には舞台の上の人物ではなく、「イッセー」を意識する傾向があるようだ。

子供
今回の一番若い参加者は、周りで展開する事を自由に観察する。無理に稽古をさせる必要はない。子供は声さえしっかりし、場慣れし過ぎていなければ必ず芝居も上手く行く。

縦笛
忘れかけていた、小学生時代の技能を思い出す。音楽隊の参加者は必ず芝居も伸びる。

岡田さん
二日目に集まった音楽隊員と打合せする岡田さん。エレキギターやリコーダー等、スタンダードな楽器から卵焼き機迄と、楽器は相変わらずバラエティに富んでいる。

観る
「舞台」での展開を観る参加者。上手く行くと、観る方も出たくなる。

バーテン
厄介な客を抱えたバーテン。その場で生まれた雰囲気は本物だ。

表情
終わらない演劇。見ているだけでも楽しいかも。