日常会話の快

運動会のテントの周りに集まる運営委員は、黄緑のスタッフジャンパーを着ている。帰りたさそうだが、どうやら雨天決行らしい。

ベンチで歌う女性の側に座る男性。「猫じゃらしって、猫とじゃれる」と切り出す彼は、女性をくどこうとしているのだろうか。そこへ現れる、話し相手のない小父さんが二人に「やっぱり日本のビールが一番」と言う。すると、二人はそそくさとその場をさる。

色々な小場面が展開し、テントの周りの人がだんだん減っていく。最終的に残されるのは年配男性二人だけだ。その一人は、昔アメリカにいた時の話をし、英語で演説を始めると、もう一人の男も逃げる。一人残された男性が、さびしげに元の席に戻ると、大玉を転がす集団が前をとおる。

今日の稽古が始まったばかりなのに、昨日からかなり進歩している様だ。

二幕目の出演者は、法被を着ている。主体は女性になりそうだ。男性陣の殆どが、その横を御神輿を担ぐ役にまわる。

ごみ掃除委員会の場面は、山頂で展開する。ここでも色々な小場面が展開する予定だ。まだ何となく少し物足りない様子だが、本番は明日なので、時間の余裕はまだ少しある。

お葬式の場面はもう昨日の段階である程度見えて来た。後ろでは、ごく一般的な受付が続き、表で展開するのはその舞台裏の人間模様だ。

ガレージセールと豚汁委員会は、しばらく模索した後、「町内会フリーマーケット」に統合される。険しい顔をしながら鍋を廻す女性重役。その側を通る学生服姿の子供が、友人に「もういい加減にしなさい。三日連続十回以上怒られているじゃないか」と怒りをぶちまける。

稽古は、様子をみながら、そして椅子の配置や人の組み合わせを換えながら続く。上手く行かない場面を繰り返す時、特定の台詞にこだわる参加者は演出家の森田に注意される。面白いのは決められた台詞ではなく、その後に続く出来事や、背景にある人間関係だ。自分の中で決めた台詞にこだわり過ぎると、そちの方が成長しなくなる。説明的な言葉よりも、何気ない日常会話が一番想像を膨らます。

「あたしさ、実を言うと、コンタクトにしたの。気付かなかった? 持てないよ貴方。女の子って髪の毛を五センチ切っても気付かないといけないの」とはしゃぐ女子高校生。その相手となるのは、小学生の男の子だと、ありきたりの男女関係が避けられ、二人もより自由に行動出来るようになる。

小学生の男の子が鍋を指さし、テントの側にいる婆ちゃんに「これ何が出来るの」と聞く。「豚汁だって」といわれると、さほど興味もなさそうに去っていくその姿がとても自然だ。お姉さんらしい女子高生が、喋りながらその後を追う。

場面が変わり、病院の運動会だ。「病院に誘われ、娘と結婚させられた。でも蓋を空けてみると借金が7億、しかも娘がぶす。俺はしっかり騙された」と婦長さんに愚痴る院長先生。そこへ奥さんが入ると、婦長場所を譲り、奥さんに椅子を持ってくる。この戯曲では、何となく院長とその婦人の関係が中心となりそうだ。

稽古が終わ時、時計は既に十時を廻っている。このワークショップの発起人である今尾君は、耐えず演出助手として活動し、稽古中に生まれる全ての段取りを懸命に書き起こす。土曜日の公演には出られない人は、日曜日に出られるようにする予定だ。これだけ複雑な構成は今回が初めてなので、かなり神経をすりへらしているのに違いない。その存在がとても有り難く感じる。

いよいよ明日が本番だ。

雨
雨の大運動会。早く帰りたい運営委員が運営本部の周りに集う。

ケネディ
現役時代は、世界をまたにかけた元商社マン。しかし退職後地元に戻ると、昔の自慢話を聞いてくれる相手さえいない。何とか英語力や偉大な考えを披露しようとする姿がさびしさに満ちている。

鍋担当
町内会フリーマーケットのカレー鍋を担当する会社の重役。「これで精一杯です、、、」と言訳しにくる部下と、携帯電話で話続けるその娘。側で聞き耳を立ながらまめ向きをする二人のお婆ちゃん。

恋
お祭りの後。落語で賑わうお本部から抜け出した女性。彼と二人でいたいが、他の人に見られるのは時間の問題。

病院の運動会
病院の運動会の場面を指導する森田。様々な人間模様を面白く描写出来そうな雰囲気。

イッセー
参加者達に明日の為のポイントを話すイッセーさん。上手く行った所をただ再現しようとしても駄目だ。舞台上でも少し変化を加え、客のサポートを体感しながら演技した方が良い。

眠い
稽古は十時過ぎまで続く。一番小さな参加者達にとっては、もうとっくに寝る時間を過ぎている。