雨の大運動会

いよいよ八ヶ所でおこなった演劇製作ネットワーク事業の最終日だ。開場後、観客が劇場に入るときの、今までとはまた違う。私たち同様、この公演は新潟の参加者達に取っても最終日ではあるが、その意味合いは少し違う。そんな事を考える内に開演時間となる。

音楽隊登場
岡田さん率いる二十人を越す大所帯が、今までの中でも最大規模。
【雨天の大運動会】
地方を巡るフォークシンガーイッセーがアシスタントとともに登場し、アナウンスが流れる合間にサウンドチェック。暢気な雨蛙家族の歌は、サウンドチェックが終わっても余韻として残る。
運動会のグランド上の運営テント。いきなり降り出す、息も出来ないような大雨に、関係者一同は大慌て。テントに集まり、椅子に座る人、傘をもって外で立つ人等、舞台中に分散する。それでも決行の運動会。後ろを大玉が転がる。テントの中のカップルが雨を見ながらの会話。外の若者がロックを語る。宝くじは買うべきかどうかの持論を解く者、自分に神様が付いてると言う者。
熱いお風呂の話をする女性の話の相手が突然テントから逃げて、外にいる友人の傘の中へ入る。残された女性が周りの視線を感じながら座る。ラジオ体操の曲が流れる。結婚と護身術の話をする女性二人。どうやら、達人になるごろには、年齢的にも襲われなくなっているのが現実らしい。
雨が止み、テントの後ろのベンチに座るカップルのおしりが濡れてしまう。その後ろには、日本のビールの美味しさを語ろうとする小父さんが、話しを聞いてくれる相手を探す。後ろを通る女子三人組が、ケーキやナンパの話をし、得意気に英語をとジャズステップを披露する。通りがかったカップルの女性が、少しもったいぶった様子で「いいよ、貸してやるから」と話す。しかし、男性の方は、もう別の事を考えているらしい。
1960年代、アメリカにいた事を誰かに話したい小父さん。「あれは、1963年だった。俺がアメリカにいた時の事だけど、あの時の大統領が大物だった。アスク・ノット・ホワット・ヨア・カントリー・カン・ドー、、、」と話しだす相手は次から次へと何処かへ消えて行く。途中まで追う小父さんはあきらめて、大玉転がしで賑わう運動会の中、テントの中で一人でぽつんと座る。しばらく呆然とすると、そこに現れるのは消防訓練をしに来た消防隊員。すると、小父さんは、消防隊員に近寄り、目を輝かせながら再びアメリカ体験談を話しだす。
【町内会フリーマーケット】
テントの前で豆の鞘剥きをしているお婆ちゃん二人と、その横の隅でカレー鍋をまわす何処となく場違いな女性。どうやら会社の重役らしい。中学生の女子が先ずカレーの女性に話しかけ、その後お婆ちゃん達に「何をしているの」と聞くが、「見ればわかるでしょう」という素っ気ない返事をされ、去って行く。後から携帯電話で話しながらやって来る男性。カレー鍋の女性の登社拒否の部下らしい。書類の話をしてから、「モンブランは上から食べるのですか」と聞くが、無視され、あきらめて帰る。
そこへ現れる女子高生と小学生の男子。「あー、やっぱり丸刈りにしなきゃ良かった。寒い。」女子が、自分がコンタクトレンズにした事に気付いたかどうかと聞き、余り関心のない男子に、「それではもてないわよ、あんた。女の子はね、髪型を変えただけでも、すぐ気付かなくちゃ」と説教する。男子は豚汁を除いてから去って行き、女子が喋りながらその後を追う。
次に現れるのは近所の主婦と、その娘だ。娘は携帯電話で話している。主婦は鍋当番をすっぽかしてしまった事を謝る。「すみません。これが自分としては精一杯なんですが・・・」豆剥きのお婆ちゃん達はテレビドラマの話をしながら聞き耳を立てる。主婦とその娘が出て行くと、次の鍋当番が現れ、女性専務はテントの奥の方へ座る。
豆剥きと煮込み作業が平和そうに続くと、そこに現れるのは三十過ぎのフリーター。豆剥き婆ちゃんの孫らしい。婆ちゃん達の姿を見て、「良いッスよね、未来があって。」祖母に金をせびろうとするが、反応がないのであきらめる。散髪を失敗したらしい孫は、お婆ちゃんに「どうしよう」と訴えるが、婆ちゃんはあまり同情しないので、そのまま来た道をもどる。
テント奥の専務の所に現れる部下二人。話がややこしそうなので、お婆ちゃんが鼻歌を歌いだす。専務が話に耐えきれず、前へ出て話しだす。「専務が壊れたのではないか」と心配する部下達が付いて行き、やがて三人は去る。残された婆ちゃん達はしばらくしてから鍋の味見をし、顔をしかめる。「こんなもん。だれも食えんわ」「そうだな」「んだんだ」と、二人の会話が続く。
【お葬式】
お経が流れるお葬式の受付テントの裏にあるベンチ。喪服を着た老紳士が、妻に「問題は、あと300万なんだよ」と悩みを話す。妻はその話には乗らず、別の話題をする。離れて座っている二人の間に、別のチームが座り、友人と明るく話し始めると、二人はその場を去る。
下手から入る男がベンチの女性達に「可愛いね」とこえかけると、二人は少し慌てて立ち去る。男の部下らしい若者が、男に何故カラオケに誘わないかと愚痴を言うが、男は余り気にしない。子供と妻も登場すると、息子を膝に座らせ楽しそうにする。妻の部下らしい女性も一緒なので、皆がせんべいを食べながらかみ合わない会話を続け、パパが周りの女性達に声を掛け続けるが。
母と息子の、受付の合間のまとまらない会話。何かに気を立てている女上司が、部下を叱る。やがて戻って来る300万円に困っている夫婦が、昔話をし、体を寄せ合う。
【山頂のごみ拾いヤッホー隊】
何処へでも現れるフォーク歌手イッセー。マネージャーと山頂のごみ拾い大会のテントの前で演奏し、雨が降らない事を不思議がって去っていく。
本部テント前に並んで立つごみ拾い隊のメンバー五人。一人ずつ、山びこに胸の内をさらす。
【院内運動会】
何時も元気なフォークシンガーイッセー。今度はお馴染みのマネージャーと病院の運動会へ現れる。
田舎の私立病院の敷地内。毎年恒例の運動会の開始時間は、雨のため遅れている。運営テントの周りに少しずつ集う看護婦達は、全員運動会以外の話題を口にする。
「医師をやってるんだから、医学部に決まってるじゃない。国立大付属をでてるんですよ。こんな所にいるのは、騙されたからだ。何十億の財産があると言われたのに、蓋を開けたら何十億の借金じゃないか」と、婦長に愚痴をこぼす院長。看護婦が、「院長先生、奥さんきましたよ」と報告すると、院長夫人は黙って院長の側に座る。看護婦達はお互いに話すが、院長夫婦は口を閉ざしたままだ。
院長の娘が、両親に、「折角の運動会なので楽しくやろうよ」と言う。暫くの沈黙の後、院長夫人が話しだすが、院長は雨の中へ飛び出す。やがて院長が戻り、テントの前の椅子に座ると婦人は、「武蔵は死んだ」と話しだす。前を通る看護婦や看護研修生は、二人の事を気にしながら日常会話をしたり、鼻歌を歌ったりして目をそらす。
婦人がまた死んだ猫の話し続けようとすると、院長は、学生時代の事を話し始める。
すると、突然テントの後ろから、現れるのはどなる女性。看護婦達は、その進む道から蜘蛛の子のように散る。やがて、女性がテントの前につき、「いつまで降ってんだよ」と言うと、院長が立上り、何か話しかけながら彼女と肩を組み、その場を去る。一人残された院長夫人が一句を詠む。
【女達のお祭り】
祭りの運営本部のなかに、円形に並べられた椅子に座っているほろ酔い気味の女性たち。その一人が落語を披露しているらしい。言葉ははっきり聞こえないが、所々でいっせいに上がる笑い声。そのなかには一人、「何が面白いのよ」と切れては笑う女性もいる。
運営テントのうらにあるベンチに座る若いカップル。テントの前の女性達が二人に気付き、カップルはあっという間に女達に囲まれ、ちょっかいされる。男子は耐えきれず泣きだし、その場を離れると、女子が後を追う。女性の内の一人が、しみじみと「高校三年生」を歌いだすと、皆が合唱に参加し、ゆっくりとテントに戻って行く。
今度は、テントへ挨拶しに来る酒屋の若坊。かれに接近するのは踊り好きの女の子。今度の二人も女性達に囲まれる。お酒の話をする人、洒落を披露する人、昔回転寿司屋でバイトをした時の話をする人と、二人は皆の退屈しのぎの的となるが、御神輿が通ると殆どの女性がそれを応用に消えて行く。残されるのは酔い津ぶれた女性一人と、テントの中に座っている長老のお婆さんだけだ。
老婆が浪曲を歌い、御神輿隊が再び通り過ぎると、舞台が暖かい闇に包まれる。
終演後は、いつもの様に打ち上げだ。会場には、各地からの参加者や劇場担当者が見えている。懐かしいながらも少し寂しい。2005年のネットワーク事業は、この新潟公演で終わった。

八ヶ所で、かるく千人を越す参加者相手の大企画だった。色々な人との出会いによって、ただでさえ実に多様なイッセー尾形・らも、次の次元への進化を遂げたような気がする。

当初予定していた一連のワークショップは、新潟公演が終わりではあるが、新・ワークショップはすでに始まっており、13ヶ所が決定しています。全国で出会った参加者のみなさんの続けたい気持さえあれば、私たちはいつでも会えるのです。

新潟公演が終わってから、そのまま年末のインターネットでもストリーミング等の準備に入り、一連のレポートも遅れてしまう結果となった。これを書いている1月25日、もうすでにイッセー尾形・らが独自に行った「カウントダウンワークショップ」も終わり、第二回目のつくばワークショップが始まっている。遅れがちな時があっても、必ずレポートを書きますので、例え直接ワークショップへ来れなくても、時折ホームページを覗きに来てください。

みなさんからのメッセージやレポートなども、是非送ってください。ちかいうち、皆さんの交流の場としてのBBSが開かれます。

テント
開演前の舞台。テントにあたる照明は木漏れ日のようにきれい。

笑う委員
雨にもめげない実行委員。その上機嫌は、雨の運動会とは全く無関係。

お葬式
お葬式での話題は、カラオケ、煎餅、元レースクィーン等を中心とし、案外と日常的だったりする。

フリーター
豆向きに未来を感じるフリーター。よっぽど夢も希望もないだろう。

雨蛙
マネージャー兼付き人と一緒に何処へでも出向く雨男フォークシンガーイッセー。雨蛙一家の曲は公演後も耳に残る。

ヤッホー隊
山頂のごみ拾いヤッホー隊の写真は案外と少ない。その元気の良い声に木霊が答える。

看護婦たち
院長夫婦の喧嘩を無視し、退屈な運動会に耐える看護婦達。お弁当の手配が出来ていない事だけが気掛かりらしい。

特技
特技を見せ合う男女。踊りよりも胡座の方が上手らしい。

御神輿
お祭りの終わりに、一人残されたお婆さんの後ろを通る御神輿。賑さと寂しさの間の静けさが感じられる。

舞台挨拶の後
舞台挨拶が終わった後、舞台を降りる参加者たち。残るのは、高揚感と打ち上げと後片付けだけだ。

音楽隊
打ち上げ会場で岡田さんを囲む音楽隊。多い事はわかっていたが、こんな大所帯だったのかな。飛び入りも入っているかも。

各地の担当者
打ち上げの後、午前3時迄続く二次会。ネットワーク事業の最終回なので、各地の担当者も来てくれている。皆さん、有難う、そしてこれからも宜しくお願いします。