キャンプ場と歯磨きと与太話

今日も小雨が降っている。ホテルの前で発見した不思議なお店で焼きたてのパンを買って出かける。きれいな陶芸品から珍しい雑貨まで揃えており、お香の種類も豊富だ。パンは薪のオーブンで焼いているらしく、周辺には秋によく似合う微かな煙の香りがする。

タクシーで少し早めに会館へ移動、場内を少し探検しようと思うと、舞台の方からピアノの音がする。行ってみると、下手においてあるグランドの前に座っているベーシストの岡田さんがにっこりと挨拶をする。手書きの楽譜を見ながらフレーズを弾いている。「ここから追って弾いてみてくれる」と言われ、言うとおりにすると、重なる軽い旋律が流れる。なるほど、面白い音楽が出来そうだ。

栗東のテーマは、暫定的ながらも琵琶湖のほとりのキャンプ場になりそうだ。色々な人が遊びに来ているという設定になる。あさ、歯磨きしながら、色々なうわさ話をしたり、何人かでとにかく普通の会話をしたりする。

ビキニの水着を買ったお母さんが、お腹を鍛えた方がいいかなと呟く。気迫のある女性参加者が、さらに気迫のある男性課長に成り済まし、で部下たちにせまる。満月のよるになると、琵琶湖のブラックバスが空を飛び、それを見た人がブラックバスに食われるらしい。琵琶湖の水は、四年に一度湖の底を掃除するためにぬかれるという話をする参加者もいる。

そんな軽い会話がはずみ、二日目なのに途中で円陣ではなく舞台上での稽古が始まる。当然全ての実験が上手くいく訳ではない。ある組のまだ要領がつかめていない参加者が、焦る余り自然に言葉が出るのを待ちきれず、「それはビックリ! 」の連発をし、どう見ても普通の団体には見えないため、演出家の森田が頭を抱える場面もある。結果的に上手にいる女性をリーダーに仕立て、学校か劇団という設定にする事でその不自然さを活かす事ができる。

しかし、そんな場面も全体の進歩の速さを強調しているにすぎない。昨日の出だしの良さが今日もそのまま続いている。まだ二日目なのに、既に舞台に出せそうな内容の作品がちらほら見えている状況だ。かえって余りにも進歩が早いので、森田は今日はもう三日目だと錯覚し、上手くいかない時は苛々気味になる。ワークショップ続きだと、確かに時間の感覚が狂い、初日と本番日意外は一つの連続した時に感じられる。

今回のワークショップ参加者も実に千種万様だ。何時ものバラエティに加え三重、新宮、横浜等からの再参加者もいれば、今までにないぐらい小さな子や、耳を済ませなければ言葉が聞き分けられない車椅子の方もいる。特に後者は演出的にはとても貴重な存在なので、何処でどう使われるかが楽しみだ。

稽古は夜の九時半まで続く。何時も真剣に稽古を見守るイッセーさんの締めくくりの言葉は、まだ二日目にも拘らず、すでに本番を意識している。「舞台に立つと、見に来て下さるお客さんが助けてくれる。それを皆にも体験して欲しい。」

まだ全体の形が見えていないものの、今回はじっくりと構成を熟せそうだ。

歯磨き
今日何度も繰り返される琵琶湖に向かって朝の歯磨き。一人ずつ何かを喋るが、それ以外の指示は出していない。用意するものよりもとっさに出て来た言葉の方が面白い。

歯磨き三人組
歯磨きをする時のよた話。「琵琶湖の真ん中には栓がある。四年に一度抜かれると空っぽになる。その時、300人ぐらいでデッキブラシを使って湖の底を掃除するんだ。俺も去年参加した。」

飛び道具
電動車椅子での参加。ゆっくり喋らなければ言葉は聞き取りにくいが、存在感は人一倍だ。一緒に組めればとても心強い。

整列
歯磨き会話が「それはビックリ」の連発のこのチームは普通のキャンプ一行には見えない。体制を変るなど実験をし、何に仕立てられるか試す。

悩む
進歩が早いとかえって悩む森田。普通なら三日目の課題を既にしているので、もう時間があまりないように錯覚する。

親子
栗東ワークショップの一番小さい参加者の歯磨きシーン。本番の時も出られたらそうとう効果的。

イッセー
「舞台に上がればお客さんが助けてくれます。皆にもそれを体験して欲しい」