深雪ちゃんの憂欝

今日の稽古は「電話」で始まった。

用事もないのに電話する者や、迷惑な電話を受ける者。結婚している男から電話をもらってしまう女性。どうやら、以前は親密な関係にいたらしい。電話を切ると、そく先輩にかけ直し、「あたし、死のうと思う」と告げる。

人は寂しくなると、色々な方法で注目を集めようとする。「私、これから死のうと思う」と言われれば、電話を切る人は少ないだろう。あまりにもの寂しさが、人を迷惑者に変えて行くのだ。

取り乱している女性。
「恐くなるの。殺されるのではないかと。そんな時って、ないですか。」
話し相手の小父さんは困った顔をする。「うん、、、」
「あるよね。ねえ、どんな時」
答えをひねり出そうとする小父さんは、しばらく沈黙する。「、、、星空を見上げる時?」
「で、何しに来たの」
「、、、」
「深雪ちゃんの事、心配だったから来たの? ねえ。違うの」
小父さん困り果てて、「うん、、、」

電話の後は、また稽古場の片隅に並べられた椅子での稽古だ。会場の舞台もすでに出来上がっているが、演出家の森田は、まだ稽古を舞台に移す段階ではないと判断する。

帰る人は殆どいない。時間が進むに連れ、一人、また一人と増えてきている。途中で数えてみたら、参加者数は40人を越えている。

いくつもの組が挑戦しているが、今日もなかなかヒットがない。時計を見ると、もう四時半だ。明日本番日なのに、上演決定作品はない。

そこで森田は、途中で入ってきた、つくばでお父さんと踊った参加者の女性を見て、彼女と「パパ」に、あの時と同じ役で別の場面を演じてもらう。人間関係ははっきりしている分、しっかりした見応えがあり、森田本人を含む全員の笑いがとまらない。

続いて、神奈川で「食品工場の女」を演じた参加者も、防御服をまとい、シールを貼りながら若い彼氏の話を続ける。栗東からの参加者の、突然の別れ話も展開する。神奈川からのもう一組も、ひと味違う老夫婦を演じる。途中で二組が低空飛行をするが、何故か親戚の叔母さんと話をしに来て、説教されるスチュワーデスも好評だ。

稽古はまだ続くが、大きなヒットはない。取り敢えずは、立続けの五作品が上演候補として残る。明日の稽古でどう変わるかもう一度見て、最終構成を行う事になる。

受けたくない電話
既婚男性から電話を受ける女性。以前は親密な関係にいたらしいが、いまは声も聞きたくない。

ピンク色の小熊
縫いぐるみ相手の勇敢な試みもあった、、、が、人間相手でも難しいなか、全然別物に挑戦して見る勇気も空しく、一台詞ぐらいで没となった。

深雪ちゃん
「深雪ちゃんの事、心配だったから来たの? ねえ。違うの、、、」

筑波の踊る親子
相変わらず仲の悪い父娘。年賀状を作った時、間違って初孫が出来た内容になってしまったのに、それでも出した娘。「受け取った方はどんな反応をするだろうね」と、気にする様子はまったくない。

栗東組
今日から参加の栗東組は、なんの迷いもなく飛びこんだのが功をなしたのか、別れ話で一発採用、、、