売れるかもしれないタカタカちゃん
小さな稽古場は、参加者で埋め尽されている。ざっと数えて、50人以上が詰め込まれている。当然出演希望が殆どではあるが、ただただ見学に来ている人もいるようだ。
外は妙な寒さだ。会場内も、暖房を効かせているにも拘らず、セーターやマフラーにくるまっている姿が目立つ。
稽古は、昨日上演候補として選ばれた5作品をメインに続く。他の組み合わせも試しては見るものの、今日のメインとなるのは、やはりイッセーさんの一人芝居だ。観客がワークショップの成果を見に来ている訳ではない分、評価も厳しいはず。イッセーさんの公演の一部として出す以上、ちゃんとチケット料に見合った出し物にし上げなければいけない。
選ばれた五組には、さらに神奈川でも好評だった「結婚式対お葬式」が加わる。この芝居は、台詞の内容も重要とはいえ、ポイントとなるのは司会者の、同じ言葉を何百回と繰り返した声質だ。言葉そのものの意味が失われ、ただただ声の揺らめきに酔うような気持だけが残されている。誰にでもできる役ではない。
そうこうしているうちに開演時間だ。
- 大晦日バーテン
- 御馴染みのバーテンイッセー。閑古鳥がなく寂れバーで、スタッフと年越し蕎麦をすすりながら元気に新年を迎える。
- ヒトミちゃん
- 北海道の港町の老キャバレ嬢ヒトミちゃん。他の女の子達に、指名だといわれ、だまされたとわかっても初めてのお客さんとの身の上話に全身全霊で打ち込む。
- ビル男
- 気持ちよく酒を飲み終えた山ちゃんは、タクシーがなかなか止まってくれないので、取り敢えずビル間の隙間に入って寒さをしのぐ。ところが、気付くとそこが身動きの取れない、奥の方へしか動けないあり地獄だった。
- 占い神主
- 自由奔放に占いをもこなす小さな神社の神主様。色々と寄せられた相談の手紙を読みながら、謎めいた例え話を説いた後、舞台をワークショップの参加者達に渡す。
- 親子ワルツ
- お父さんを貶しながら暇つぶしをする娘。しかし、今日は彼女の誕生日だ。部長に昇進となったお父さんが部下で構成した誕生日楽団が、二人のやりとりの一部始終を聞いている。
- 食品工場のシール貼り姫
- 食品工場の包装ラインで働く30代の女性。ひょんな事から出来た、自分よりもかなり若い彼氏をあの手この手でおちょくりながら楽しく暮らしているらしい。
- お昼休みの相談会
- お昼休み、漬物屋で働く叔母さんに会いに来たスチュワーデス。叔母さんの知り合いと不倫しているらしい。叔母さんはその事に直接触れないように、「不倫はあかんよ」と何度も忠告をくりかえす。
- バービー夫婦のお茶会
- バービー婆ちゃんのお茶会。威厳のある旦那様は、奥さんの言葉を裏付ける18年も年下の忠実な引立役。養老院でもみられそうな、容赦ないランク付け会。
- 映画と二人
- 受験勉強の寂しさを紛らわすため、ゴシックロリータ趣向の女性と関係を持ってしまった映画青年。別れ話を持ち掛けると、いつもの事ながら涙が止まらない彼女に心が動き、「やり直そう」と切り返す。
- 結婚式対お葬式
- 結婚式にもお葬式にも付き物の「入場」「花」「思い出の写真」「手紙」等の要素を巧みに使い、司会者同志の壮絶なバトルが繰り広げられる。
- タカタカちゃん
- いつもは売れる見込みの気配すらない若手円か歌手タカタカちゃんイッセー。お銭湯で営業する彼の姿は生き生きとし、この子はもしかして何処かに、いつかは大スターになる素質を秘めている可能性も伺える。
公演は無事に終わり、観客の半数は夜の稽古に付き合ってくれると、嬉しい気持になる。暖かく見守ってくれる人がいてこそ、演者ものびる。

狭い稽古場に、少なくても50人は陣取っている。本番に出す作品は5、6作に限られるものの、本番後の公開稽古に出られるチャンスを狙っている。

いよいよ本番だ。ショッパーズに舞台を受け渡す神主イッセー、、、

「不倫はいかんでぇ」。昼休み、会いに来たスチュワーデスの姪に、必死になって忠告する叔母さん。どうやら知っている既婚男性とのうわさがたっているらしい。

つくばの、パパ嫌いな娘は、誕生日に演奏しに来る父の部下に不意打ちされ、父と踊る事になる。

横浜ワークショップでお馴染みの、シールはり作業に打ち込む作業員、、、

ホームパーティーをしている老夫婦。無口ながらも詩好きな旦那さんと、お喋りな、社交的ながらも威圧感のあるバービー婆ちゃんのコンビは、不思議な空気を漂わせる。