図太さが好き

つくばは、家から中途半端な距離だ。ワークショップが終わるのは、21時半過ぎなので、電車で帰ろうと思えば帰れなくはないが、時間の余裕があるとも言えないので、今回は車で森田オフィスに通う事にしている。参加者の中にも、神奈川県から通っている人がいる。通勤でもないのに、かなりの気力の要る距離だ。それでもこのワークショップに参加してくれるのはとても嬉しい。

今日は、まず地味な人を演じてみる。別に、他のタイプの人よりも演劇的な価値があるという訳ではないが、殆どの参加者にとってはその方が派手な人を演じるより簡単なはずだ。ポイントは、自分以外の人の癖や考え等をなぞれるように成る事だ。

しかし、地味よりも派手なタイプの方がやりやすい人もいる。演出家の森田は、一人一人の演技をみて、選んだ人が先へ進む糸口に成るかどうかを判断し、「その人は違う。あなたの場合、明るくあっけらかんとした人の方が良い」などと指示をする。

雰囲気はいままでになく和やかだ。最初のつくば公演の時は、全員が一年生だったのに対し、今回の初参加者には頼りになる二年生の先輩がいる。手を繋いで歩きさえすれば、知らない道も恐くはない。一年生と二年生の数も約半々で、バランスが良い。

森田の言葉にも余裕が感じられる。時折、百人相手では覚えきれない参加者の名前を口にしながら、解説をするときもある。人の性格は体勢に現れるので、当然座り方等を変えれば受ける印象も変わる。つくばの「踊るお父さん」は、いつもきっちり左右対称な座り方をし、不器用そうな雰囲気を漂わせる。新潟の「米国談から逃げる実行委員」は、困った時も左右非対称な姿勢をとり、チャーミングさをアピールしている。

後半の休憩の時、楽屋で図々しい事や無神経な事に動じない人の話題が持ち上がる。ある編集者が昔、森田のまだ幼い息子に「口が臭い」と言われ、平然と「そうよ、年寄りになるとみんなこうなるのよ」と返したという。そんなやり取りをするのもおもしろそうなので、前準備として、皆に今まで演じたキャラクター等を思い出してもらい、「図太い」人を指さしてもらう。相思相愛の理想的なカップルは一組しかない。一人にも指名されなかった人には、自分の図太さをアピールするチャンスが与えられる。他人をけなす人、怒られるてもうんざりとした「はい」を繰り返すだけの人、殷懃無礼な人等と、アピールのしかたが皆ちがう。

いよいよ閉館時間なので、人と組んだ形の稽古は明日からになる。音楽マスターの岡田さんは、今日ホテルに泊まるので、かれの暖房のきかないプジョウで返る事にする。後ろの空いている座席に、同じ方向へ帰る参加者を二人乗せ、皆で体を毛布に包みながら帰路を走る。

図太い演技
だれにも「図太い」として指名されなかった参加者は順々に「図太い」人を演じて見る。後で「図々しい」相手役に対処する予行演習だ。

岡本さん
今度は音楽ディレクターだけではなく、演者としても参加する岡田さん。しぶ目の演技が期待出来る。

森田
「地味な人」の科目を出した森田。役者は、選んだ人物を演じ遂げられるかを観察する。

動じない人選び
「動じない人」を選ぶ参加者。相思相愛なら、次の科目で組んでもらう事になる。

イッセー
相変わらず観察しながらデッサンするイッセー。昨日は仕事で来られなかったので、今日からの参加となる。